クラシックな殺し屋たち


題名:クラシックな殺し屋たち
原題:THE BACKUP MEN (1971)
作者:ROSS THOMAS
訳者:筒井正明
発行:立風ミステリー 1976.2.5 初版
価格:\800

 デビュー作『冷戦交換ゲーム』と最新邦訳『黄昏にマックの店で』の間の20年間におよぶマックの店の、これはまだ初期の頃の波乱万丈ストーリー。現在立風の扱うロス・トーマス作品はすべて絶版になっているから、こうして誰かから借りたり古本屋で運よくめぐり合えない限り、本書を手にすることはできない。ロス・トーマスのファンにすれば、そんな不合理な話がこの世に存在するのかと思いたくもなるのだが、こればかりはどうしようもない。とにかくこれを読むことができたのはまことにありがたい話。五条君、いつもながらに感謝してます。

 さてマックの店シリーズと言うと同作家の作品の中でもあまり複雑でないストレートなプロット、マックとパディロのコミカルなコンビネーションもなかなか見ものだ。パディロにいつまでも張り付こうとするCIAと、その巨大なる国家背景までが滑稽でちゃちに見えるところが、彼らの存在の痛快さに即繋がっちゃって、カタルシスも最高というわけだ。

 本書は追跡、逃亡ものでマックの店でスタートした物語は、危機また危機のさなかで、西海岸へ向けて突っ走る。アラブの王様も交えちゃってしかもその王様がクリスチャンであると言うんだからまあなんとも人を食った話ではある。そういう人を食った話を本当に極上のオハナシに変えて、しゃれた文章で飾り付けたおいしいリキュールがこの本だった。

 こんな本だったら毎日でも読みたい。それなのにこれが当時は日本ミステリー界では受け入れられずにひっそりと書店の棚からすたこらすたこら去っていってしまったんだ。どの本を取り上げたってホンモノのミステリーの書き手なんだけどなあ。というわけで、常時絶対自信を持ってオススメするロス・トーマスの絶版本を求めてみなさま、ともに東奔西走いたしましょうね。

(1992.11.22)