燃える波涛 第六部 烈日の朝




題名:燃える波涛 第六部 烈日の朝
作者:森詠
発行:徳間書店 1990年9月 初版
価格:¥1200(本体¥1165)

 森詠入魂のポリティカル・アクション巨編第六弾。タイトルに第六部とあるが、実際に内容を整理してみると、以下のようになる。


第一部

  • 第一部 1980年代後半  昭和維新による右傾化
  • 第二部 同上
  • 第三部 同上

第二部

  • 第四部 明日のパルチザン  その3年後  外伝風エピソード

第三部

  • 第五部 冬の烈日 その2年後  亡命政府による抵抗
  • 第六部 烈日の朝 同上    
      〃


 このような構成なので、本書は前作の続きとなっている。第一部からの登場人物も数多く出てくるし、ストーリーは、第一部での設定をもとに堅固に築き上げた近未来の上で走っているから、本書を単独で読むことにはあまり意味はないと思う。山登りと同じで、ここまで登場人物と一緒にやって来た者でないと、本作の醍醐味は味わうことができないだろう。

 ぼくの場合前五作を一息に読んでしまったので、そこまでは問題なかったが、やはり一年近いブランクを置いて続き物を読むというのは、相当のハンディを感じざるを得ない。まず前作のストーリーを思い出せないというのがある。人名が出てきても、即座に誰だったかわからない。やはりストーリーの流れは断ち切られてしまっているのである。できることなら、本書は前作とペアで読んだほうがいいようである。

 とはいいつつもポリティカルな部分を多く含んだこのような作品は、現実の世界情勢に照らし合わせつつ小説世界を楽しむ、という面白さもあるから、出版と同時に早く読んでしまいたい、という抑えがたいものもある。作品自体が現実の近未来を言い当ててしまったり(イランのクウェート侵攻)、逆に時の経過によって起きた現実界の新しい異変をも取り入れられているところ(天安門広場虐殺)など興味が尽きない。その他大いに含みのある予告に満ちた作品であり、もとジャーナリストである作者の世界を見る眼が、小説の形を取って、実に多くのことを語っている。

 そして散りばめられた多くのアクション・シーンの手に汗握る面白さは、仕掛けられたスケールの大きさ故に、日本離れしたものがある。右傾化した日本を離れて亡命政府は、アジアの革命家たちと手を組み汎太平洋闘争へと乗り出す。彼らが日本に帰ってくる日には、多くの仲間が手を握った強大な革命の軍隊になっているかもしれない。彼らの海に乗り出すシーンで、次作さらにスケールを増した物語を期待させるところが何ともたまらないのである。

(1990.09.27)