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死神鴉 横浜狼犬 II





題名:死神鴉 横浜狼犬 II
作者:森詠
発行:光文社カッパ・ノベルス 1999.8.25 初版
価格:\848

 凄い傑作! なかなか見つからなかった本だけれど、アマゾン・コムが時間をかけて届けてくれた。ともかくも新宿鮫シリーズやら馳星周らがぶっ飛んでしまうようなアジアン・ノワールの傑作! 

 これは横浜狼犬/海道章のシリーズとしては、実は初作に当たる『嘆きの峠』に加筆補筆して改題した作品である。家の書棚に並んでいる『嘆きの峠』が未読だったのに、それと知らずこの手に入りにくい『死神鴉』を探し求めていた自分が今では愚かに見える。

 しかし、これほどの傑作が絶版に近い状態(少なくとも『嘆きの峠』は絶版)に置いておくというのは、日本ハードボイルド&アジアン・ノワール愛読者にとって大変な不幸としか言いようがない。この作品をこの作品の出版年に正しく読んでいたなら、ぼくはこの本をイヤーズ・ベストに間違いなく入れていただろう。森詠の作品としてはあの冒険小説の名作『さらばアフリカの女王』(これも信じ難いことに絶版!)以来の快挙と言える一冊なのだ。

 日韓混血の刑事が主人公であるなら、やってくる殺し屋・鴉も日韓混血。舞台は横浜。そして韓国。犯罪捜査に命を賭けながら、実は自分探しの旅とも言えるような血へどを吐くような道のりを辿る海道章シリーズの、言わば心臓部に当たるのであろう物語が本書。

 作者はこれを書いた時点ではその後のシリーズ化を考えてはいなかったのだろうと思う。でも作者ですら捨てがたくなったのが、海道章というこの上なく魅力的な主人公であり、ぼくは彼に出会って以来、海道章を追い続けることに決めたのだ。このスケール、このテンポ、このアクション。そして何よりも、このワイルド。和製エンターテインメントの一つの極点を極めた作品と言って、決して言い過ぎではないはずの作品がこんなところに埋もれている。

 今は、この本(あるいは『嘆きの峠』)を読んだ人はいないだろうか?

(2001.03.22)