おれは殺し屋



題名:おれは殺し屋
作者:森詠
発行:光風社出版 1992.3.20 初版
価格:\1,200(本体\1,165)

 この本を買って読み終えたのは、単に自分が森詠のファンなもので、森詠の本は新しいものはどんどん買って読むという主義であったからに過ぎない。といって古い本を全部読破しているわけではないから、それほど思い入れのあるファンであるとも言えない。まあ、なんとなくチェックしておきたいジャンルの作家である、くらいかな?

 それにしてもこの人は短編が多くて、たまにいい短編集も出すのだけど、ほとんどは雑誌掲載の細切れ作品を体裁よく纏めたものといった、しかもそれでいて値段の高いハードカバーが多い。この本は内容は大したこともないし(そろそろぼくも飽きてきてる)、わざわざハードカバーで出さんでも……と文句をつけたくなるくらい軽い短編集。

 あまり書くこともないので目次を

  • おれは殺し屋
 第一話 暗殺者
 第二話 追跡者
 第三話 謀叛者

  • 私は探偵
 第一話 殺し屋が多すぎる
 第二話 幻の肖像画

  • もうひとりの男

 と6話構成である。最後の「もうひとりの男」は、読み始めて気づいたのだが徳間文庫のアンソロジィ「幻!」に載っていて、既に読んでいた作品。

 森詠にしては珍しいのは「幻の肖像画」が推理小説であること。殺し屋の方の話は、どうも殺し屋というのは森詠描き切れないらしく、劇画調というか、隙や穴ボコだらけで頼りない人物。背景はマドリード、パリ、イスタンブールと作者お得意の国際版なのだが、かえって日本を舞台にした後半の探偵もののほうがストーリーは優っているような気もした。

 最近森詠は長編もそうなのだが、書き慣れすぎて、作品が軽くなっているのが残念である。「『さらばアフリカの女王』よ、さらば」とは読者を嘆かせないで欲しいものだ。

(1992.03.02)
最終更新:2007年07月12日 18:35