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探偵は吹雪の果てに


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作者:東 直己
発行:ハヤカワ・ミステリワールド 2001.12.31 初版  2002.1.31 2刷
価格:\1,800

 正直、もうススキノ探偵シリーズは書かないのではないかと心配していた読者が大半だったろう。作者が歳を取り、多くのしがらみを世間的に身につけてゆく中で、東直己の等身大ヒーローはもはやススキノ探偵ではないだろう、畝原だろう、そう思う読者は多かっただろう。畝原シリーズは確かに優れている。だが、ある意味重い。あの自由闊達で面白おかしく生きている風来坊のような主人公。探偵ですらないあのススキノ便利屋の小説ももっともっと読みたかったと思う読者もきっと相当に多かっただろう。

 シリーズ最新作とは言え、ここまで短篇を含め5作を読破しないと、この作品には辿り着けないはずだ。しかし一ヶ月で再版されるだけの馬力がこのシリーズにはまだまだあったということだ。それだけ待たれていたというのもやはり事実だった。根強い読者層がこのローカルな作家にもきちんと着いてきていたということなのだ。嬉しい。

 何しろ『探偵はひとりぼっち』以来だ。最後のセリフは「わたし、お腹に赤ちゃんがいるの」だった。探偵の赤ちゃん。うーむ。そこで急に東直己の筆先は子持ち探偵・畝原に向けられて久しかったわけだ。1998年のびっくり結末以来読者は実に3年も待たされたことになる。なんと気を持たせる作家であることか。

 そして本書では驚いたことに探偵は中学生になる息子に仕送りをしている。春子とは離婚している。そんな時間の経過があるかと思う。だが、よく考えてみれば、探偵シリーズはいつも今より少し前の時代、風営法が変わる前、ソープランドがまだトルコと呼ばれていた頃の物語なのであった。ローレンス・ブロックの『聖なる酒場の挽歌』同様に、いつも記憶のカーテンの向こう側にある過ぎ去って懐かしい「昔の」物語なのであった。

 それが本書ではいきなり現代なのだ。畝原に作家の主体を持っていたばかりではなく、年齢と家族という荷物とをきちんとススキノ探偵の方にも課していたのだった。

 さらに驚いたことにススキノ探偵であるはずの「オレ」が、遥か道北の寒村に舞台を移す。この田舎町の描写が実にリアルで可笑しい。ぼくが思うにモデルとなる町は幌加内ではないかと思うのだが、雪が深く、車で通り過ぎるのに1分も要らない。西部劇に出てくるような一本のメインストリートだけの町。シティでもタウンでもなくビレッジくらいに形容しておいた方が良さそうな町。そこに住む怪しげな人々。夜のバス停にうろうろする女子高生の描写のおかしさ。

 うーん、まさに北海道しているのだ。観光や出張でしか北海道に来ない人々に是非お伝えしたい北海道の平均的田舎町の真実、とでも言いたくなるくらいの。

 実にいろいろ驚かされてしまう物語であった。やはり畝原にはない行動をこの探偵は取る。やはりこの後もこのシリーズも続けて欲しい。また回想の昔に戻ってもいい。この作品のように現代に視点を変えてもいい。とにかく続けて欲しいのだ。