沈黙の森


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題名:沈黙の森
原題:Open Season (2001)
作者:C・J・ボックス C.J.Box
訳者:野口百合子
発行:講談社文庫 2004.8.15 初版 2004.12.20 4刷
価格:\714



 何年も経ってから誰からも口コミで聞いたことのない作品に出くわすことは決して少なくはない。本作品はあまり巷間で取り挙げられることなくぼくの周りを沈黙したまま過ぎていったが、狩猟区管理者という主人公の職業に惹かれるものがあって、手に取ってみた。まさに掘り出し物だった。

 ワイオミングの山中を舞台に展開するミステリーというだけで、既に稲見一良、大藪春彦といった狩猟系ハードボイルドを思い起こさせ、同時に、森と銃はスティーヴン・ハンターの描く仮借なき死闘小説を思わせる。

 そうした空気をいくばくかずつ掴み取りながら、この小説の背骨にはディック・フランシスが入っているようにも思える。決して格好よくない主人公は、とちりを繰り返し、周囲から嘲りを受けているが、ある日、彼のもとに転がり込んだ死者が、すべてを変えてゆく。

 主人公ジョーの抱える家族が狙われるのだが、特に長女シェリダンの心の繊細さがたまらない。運命の歯車は一家を危険のさなかに導いてゆき、悪党どもは狂気と粗暴を剥き出しに牙を剥く。

 新米のジョーが家族と正義を守るために怒りを炸裂させてゆく過程は、ディック・フランシスでありながら、一方でプロの仕事師なのである。さらに、『真昼の決闘』のアメリカン正統派ヒーローであり、孤高の保安官ゲイリー・クーパーでもある。

 ランボーやボブ・リー・スワガーの生きる森という野生のリングで、謀略にさらされるこの物語は、四つの新人賞を獲得済み。さらにその後3作ほどがシリーズとして書き継がれ、日本でも二作目の『凍れる森』が出たばかり。

 新タイプの舞台、新タイプの主人公でありながら、何故かノスタルジー溢れる小説世界に浸ることのできる、好印象スタートのシリーズだ。

(2005.11.13)