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殺意の教壇




題名:殺意の教壇
原題:The Last King Of Texas (2000)
作者:リック・リオーダン Rick Riordan
訳者:林 雅代
発行:小学館文庫 2005.5.01 初版
価格:\752




 『ビッグ・レッド・テキーラ』『ホンキートンク・ガール』に続く「見習い探偵トレス・ナヴァー」シリーズの第三弾。ドン・ウィンズロウの『ウォータースライドをのぼれ』がドタバタ調で、完成度という意味ではイマイチの出来だったあたりと比較して、同じ見習い探偵でも今回は、ニール・ケアリーより、トレス・ナヴァーに軍配が上がったという気がする。

 トレスは無表情でユーモラスな一人称の探偵だが、何よりも酒の飲み方や、台詞への懲り方など、若いながらもミロ・ドラゴビッチを意識したようなデカダンスが感じられる部分、さすがテキサス育ちといったタフガイぶりである。

 人のよさそうなトレスを囲むのは、探偵会社の女性社長、先輩探偵ら、そして美貌の女性捜査官と、暗黒街で恐怖の名を轟かすメキシカン・マフィア。そして若いツバメを銜え込む実の母。彼らの好意に救われながら、事件の解決ばかりではなく、トレスの成長ぶりや、テキサスという荒々しい風土、その地で生きてゆくために必要な精神と肉体の強靭さ、そうしたものをたっぷりと描き込んだ大型ハードボイルドのシリーズが本書である。

 ジェイムズ・クラムリーの正統派後継者とぼくは呼びたい。テキサスの自然と野生、国境近いゆえに入り混じる人種と異文化の匂い。ストロングな酒と、容赦のない暴力と、独特の根強い人情を併せ持った、けれんのないドラマが展開する。

 タイトルの『殺意の教壇』から感じられる推理小説臭など微塵も感じられないばかりか、原題「ザ・ラスト・キング・オブ・テキサス」のほうが遥かに味わいある後味を残してゆく趣の快作である。

 トレスの背伸びして挫けない負けじ魂と、あまりに個性的で味のあるバイプレイヤーたちの魅力に、酔うことを請合いたい、シリーズ、ベスト作品であろう。

(2005.09.18)