裏と表





題名:裏と表
作者:梁石日
発行:幻冬舎 2002.2.10 初版
価格:\1,600

 ここのところ日本作品は冒険小説というより、経済小説と言ったほうが良さそうなくらい、この手の本が売れている。白川道などは、『流星たちの宴』で先物相場の世界を描き鮮烈デビューを果たしたけれども、思えばギャンブル放浪記でもある『病葉流れて』だって、大河ロマン『天国への階段』だって、経済小説として読める。作家的原点がもろに経済なのだ。

 新堂冬樹となるとこれまた闇金融の世界から出てきた作家で、非常に怖い世界を描きつづけている。奥田英朗の『最悪』などは、中所企業主の自転車操業がどんどん出口の無い方向に追い詰めらてゆく過程を事細かに描くことで成立しているようなもの。他にもノワールに近い話などでも、どこかで経済小説の匂いがしてくる作品は最近大変に多い。但し「闇」とか「裏」とかいう文字を冠詞として付けた経済小説。

 さてその「裏」を書かせるとなかなかに鋭く、思えばどの作品も経済小説と読めなくもなかった梁石日。そのまさにタイトルが『裏と表』。前作『睡魔』では自己啓発セミナーでの資産吸い上げシステムを描き、今回は街でよく見かける金券ショップをだしに使っている。但し、だしであってメインストーリーではない。物語は、前半確かに金券ショップの経営の裏表を活発に描いて、いつもの梁石日小説の元気さ、力強さなどが感じられるのだが、物語は実はとんでもない方向にエスカレートしてゆく。

 その中で金券ショップは闇経済の環の中の一つのギアのような役割を果たしているかに見えてくる。主人公がコリアンでないことに珍しさを覚えていたのだが、なるほど話の進展と拡大につれて誰が主役かわからなくなってくる。相変わらず自由度の高い書き方だが、最後には取って付けたようにサイドストーリーが明かされる。こんな話は不要だったとも思えるし、ラストが切なくていいようにも思える。いずれにしたって、多重性の小説家として捉えるべき梁石日の独自性と言えるだろう。

(2002.04.06)