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睡魔





題名:睡魔
作者:梁石日
発行:幻冬舎 2001.4.10 初版
価格:\1,800

 いわゆる自己啓発セミナーを伴ったネズミ講、であるところのマルチ商法。具体的には健康マットを販売し一稼ぎ企む男たちの話。と言うととても平板に聞こえてしまうけれども、実は、貧乏とデカダンスな道楽のなかで、明日なき生活を共にする二人の野郎どもの荒稼ぎストーリーは、切なく空しくタフの一言である。『夜の河を渡れ』の延長線上で奏でられた同音異曲と言える作品だろう。

 一方で『無間地獄』『カリスマ』の新堂冬樹のように同じ荒稼ぎであっても、稼ぎの手法そのものの持つ圧倒的情報量と社会のひずみに浮き沈みする人々の悲哀などで勝負してくる種類の作品とは一線を画する。梁石日はそうした荒稼ぎ人生そのものにむしろ虚無の風を吹かせ、それでいていつも凄まじくエネルギッシュな生への貪欲を見せる刹那の男たちのキャラクターを前面に出して勝負してくる。

 梁石日の淡々として凄い内容、過激な選択をいとも容易なことのように綴ってゆく文体。作者にも見放されたような男たちの弱さと、一人でも跳ね返ってゆく生へのバネ。日常から非日常へふっと滑り落ちてゆく転回からあくまで喘ぎ闘い走り続ける男たち。自堕落、快楽主義など、刹那の中でしっかりとどこまでも腐れ縁のように長持ちしてゆく青年たちの絆。

 梁石日の良さが、シンプルな形で出てしまっているところがこの本でも相変わらず凄い。インチキ商売の裏に迫りながらも、そんな社会的ひずみよりもずっと男たちが際だってしまう皮肉に、佳作であることをより強く感じてしまう作品である。

(2001.06.30)