死は炎のごとく (「夏の炎」へ改題)





題名:死は炎のごとく
作者:梁石日
発行:朝日新聞社アジア・ノワール 2001.1.1 初版 2001.1.2 2刷
価格:\1,800

 大江健三郎の中編小説『セブンティーン』、あるいはフランソワ・トリュフォー監督の映画『ルシアンの青春』。あの懐かしくも、若く粗暴で純粋なテロリストたちを想起させるような、行き場のない主人公。幕末の岡田以蔵のように人斬りタイプの種族に属し、生き方よりも死に方に価値基準を置いたような刃のような危険を懐に抱いて、全速力での疾走を選択する一人の分子。

 時は韓国朴軍治独裁政権下。舞台は『夜を賭けて』『血と骨』と同じ大阪の朝鮮人長屋。主題は朴大統領の暗殺。

 梁石日という作家特有の、流れるような乾いたテンポに引きずられ、一気に暗殺事件の会場へと走り続ける物語。

 冷徹で過酷なまでに距離を置いた表現。作家の存在を表に出さず、あくまで小説という娯楽のかたちで表現し提供してゆく作家としての立場から生まれたものだからこそ、いつもその作品はハードでタフで、純粋極まりない。娯楽小説とは言えないもののように思えるのは、いつもこの作家を読むときに感じる居心地の悪さだ。

 ひさびさにストレート弾をどてっ肚に食らったような重たい衝撃を受けた。

(2001.04.28)