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題名:Z
作者:梁石日
発行:毎日新聞社 1996.7.10 初刷
価格:\1,900




 梁石日を読むのはこれが初めてなので、作風などに関する前知識はゼロ。それにも関わらず読み始めるとまもなく強烈な印象を感じさせられるのは、やはりこの作家の持つ個性か。

 事業に失敗して大阪を出奔、タクシー・ドライバーを続け、在日朝鮮人の解放闘争に関わりつつ、その人生の後期になって詩人と作家と言う二つの顔で文壇にデビュー。こうした作家の顔が、小説中の分身となって歴史スリラーを紡ぐ。

 小説としてはまとまりを欠いた話でありながら、これだけの歴史の残酷に度肝を抜かれる。歴史の残酷というものにはあまり論理性はなく、またその犠牲者にはあまり救いもない、と承知していながら、こういう本に触れると、遣り場のない思いに駆られざるを得ないのが人間というものだと思う。

 個人のハードボイルドものというよりは、戦後の列強と日本の協定の狭間に犠牲になって分割していった朝鮮半島の悲劇自体の方が浮彫りにされているようだ。徹底して救いのない暗い話にどうやって落とし前をつけるのか、ぼくらは途方に暮れる。憎むべき暗殺者Zは、ひとりの特定の個人ではなく、戦争という暗殺機構そのものに埋めこまれたギアのひとつでしかないからだ。

 最近出た『AERA』には、韓国にできた占領の記念館のようなものが紹介されていた(正式名を覚えていなくてすみません)。日本人が韓国人を拷問にかけている蝋人形がいくつも展示され、呻き声が館内を領しているらしい。そのさまを補強するような話がこの本だと言うと、わかりやすいかもしれない。そしてそれをひたすら読みやすく、一気読みの形にして、ぼくら無知なる日本人に提示してみせたのがこの一冊なのだと思っていただきたい。

(1996.08.26)