生き残った者の掟


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題名:生き残った者の掟
原題:Les Aventuriers (1960)
作者:Jose Giovanni
訳者:岡村孝一
発行:河出文庫 1986.04.04 初版
価格:\500

 この作品が一体ジョバンニ作品の他の部分と、どう関連しているのかという興味のほうに引かれて行ってしまう。

 ロベール・エンリコの映画『冒険者たち』にジョバンニは関っていたのだろうか? その有名な映画をぼくは果たして観ているか? 観ていると思うのだが、きちんと観ていない。男女3人。なんとなく記憶にある。しかしジョバンニ版『冒険者たち』(日本未公開版フィルム?)が、この本の物語で、あの映画とは別であるとは。それで映画(ロベール・エンリコ版)の続編? ジョバンニはエンリコ版の映画作品が気に食わず自分で撮り直したかったと言う。だとしたら、この本は? 映画のために書かれた小説なのだろうか?

 それにしてもマニュとローラン。『穴』の5人のうち、主役級の二人。この物語中でも牢獄の過去を共有していることがわかる。それから何年もの時間が経っていることも。大金をせしめて南の島で王のような暮らしを営んできたこともわかる。もはや、やばい橋を渡らなくてもいい。過去に置き去りにしたものが多過ぎる。別れなくてはならない男たち、であることもわかる。

 コルシカに運んで来た死体は誰のものだろう。仲間だという。ロレント・バルトーリ。『穴』には出てこない。彼はエンリコ版『冒険者たち』に登場するのか? マニュは船をマルセーユの港にいる少年に売ってしまう。彼の名はアントワーヌ・リッパ。『おとしまえをつけろ』で、ギュが組む若者と同名である。土地もぴったり合う。ギュの物語を何年も遡ったところの時代に、本書があるということだ。

 ある程度疑問が出揃う。回答はなしのまま。マニュと女との出逢いの話になる。コルシカの美しくも貧しい自然の中で、プラトニックな愛のリリシズムが続く。美しいままの文章。切れ切れで映像的で、夢のような、まるで人生のすべてが済んだ後の、天国のような、島……。この本は何だろうとやはりぼくは首を傾げた。しかし、読んでしまう。

 最後に何もかもがはっきりする。つけ狙ってくる。そして命のやりとり。笑いたくなるほどの死闘の動機。行きがけの駄賃だった。では女はというと、どうにも安定の悪い正体だった。ヨーロッパの小説にはヨーロッパの歴史がある。フランスにはフランスの歴史があり、それは時には現代になびいてくる毒を含んだ風のようだ。それらの一握りのガスが、こんなところに着岸していたとは。情感で綴ってきたように見えて、その実鮮やかな、血の出るような切り口を突然見せてくる本なのだった。

 ジョゼ・ジョバンニ。どの作品も別の世界で、どの作品も同じ種類の、世界にはぐれた男と女の必死の姿だ。放り出されるような世界の広さを感じて、閉じた。

(2003.01.27)