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空は青いか




作者:花村萬月
発行:講談社 2005.05.20 初版
価格:\1,500

 「小説現代」で二年間に渡り連載していたエッセイを纏めたもの。作中の作者記述によれば、以前は小説を続けざまに書いていたが、小説の合間にエッセイを書くことで、小説とは別次元、つまり現実であり嘘ではないところの文章を書く気楽さを味わい、ふたたび小説という嘘を書くしんどい作業により集中することができるようになったそうである。

 エッセイはいわゆる緩衝材みたいな役割を果たしているらしい。それは文章を読んでもわかる。小説の一行一行に込められた緊張からすっと離れたところで、気分の赴くままに書いてしまえるところがあるのだろう。肩の凝らない、オヤジギャグ塗れの、人間・萬月の姿がここにある。

 さりとて平均的な日本人とは縁遠い人生を送ってきたこの作家の軌跡を知りたいと思うのは、萬月読者ならごくごく当たり前のこと。この放浪人生にして、どこでこうした文章の才を掴んだのか。はたまた文章以外に、ものごとを捉える涸れ独特の視点はどこで獲得してきたのか?

 そんなよしなしごとまでをも知りたさに、萬月氏の書いた活字は、WEBでの日記までをも含めて(とうとうその日記さえもが本になっている始末だけれども。かように萬月という人の書いた文章は金になる!)、どんどん貪り読んでしまおうという気になるのだ。

 本書では、バイクや四駆車の無謀運転(?)のことや、十勝に鳴海章を訪ねる旅行記、はたまたWEB日記でもよく見られる素人原稿や新人賞のこと、ブルースのこと、グルメのこと、等々。やはり二年も連載していればいろいろあらあな、という具合に尽きぬネタが満載。作家による脱書斎であれば何でもありなんだろうけれど、いわゆるこの人のように様々なものへの興味(つまるところバイタリティだと思うけれど)をむき出しにしているタイプのエッセイ集というのはは、義理書きなどの気のない雑文集と違って、それなりに熱意とそうでない部分がくっくりと明確に色分けされていてわかりやすい。

 いわゆる表情の豊かなエッセイというのだろうか。日ごろ文章という枠組みで自分を律している人だからこその逸脱すらも、遊んでしまうその心が、ぼくは一番読んでいて嬉しいところなのである。

 ちなみにこの手の本格雑文集は、萬月氏の場合、実に手に取るのが久しぶりなのであった。小説の合間にこうしたものを読むというのは、読者にとっても生活の緩衝材としてそれなりに嬉しかったりする。最もぼくは小説家ではないから、小説だってそもそも日常生活の緩衝材なのだけれども。

(2006/03/21)