されど卑しき道を



題名:されど卑しき道を
作者:風間一輝
発行:角川書店 1995.06.30 初版
価格:\1,300

 この作者、初の短篇集。短編と言うのは長編作品からはとても予想できないという作家が多いけれど、この作家もその例に漏れない。ここ数作の長編よりは、じっくり描いているせいだろうか、この短編集の方が遥かによいと思う。

 この作家は『男たちは北へ』一冊、という評価をよく耳にするけれど、こういう短編を丹念に描き続けていれば、もう少し評価も高まるような気がする。

 ちなみにその名作『男たちは北へ』のサブストーリーがいっぺん含まれているのも興味深い。また長編の主人公らが池袋の深志荘というアパートでひとつに繋がっているのは知る人ぞ知るところだけど、この短編集では別の主人公がまたひとり深志荘からデビューしている。

 怪しげな作家の手になる怪しげな男たちの、けっこう胸をつくストーリー群である。

(1995.12.16)
最終更新:2007年07月08日 18:56