片雲(ちぎれぐも)流れて





題名:片雲(ちぎれぐも)流れて
作者:風間一輝
発行:ハヤカワ・ミステリワールド 1995.10.31 初版
価格:\1,500




 この作者、情感の作家と思えば、また長編に戻るとプロットを練ったりして、エンターテインメントに走ろうとする。それなりに面白味のあるお話を作ろうとしている努力は涙ぐましいのだが、どうも劇画的になる印象があるのは否めない。

 この作品も娯楽的すぎて、ぼくにはちとつらい。『男たちは北へ』のあの少年と雲水との出会い、異種格闘技対決を主軸に持ってきたアクション、環境破壊や政治腐敗という社会的に流行しているようなバックグラウンド……と一応材料が整っているのを、この程度のページ数で終了させるのは、ちとつらい、と思うのである。

 以上のように大変面白くいいファクターを満載していることが、裏目に出ているとでも言おうか。ましてや、続編を予告するかのような終了の仕方、いろいろな意味においてコミックに近いものを感じて、コミック・ファンでないぼくにはとても残念。

 またこれもそうだが池袋の深志荘にこだわらず、全く別の世界、次元、時空、といったところにも少し翔いて欲しいもの。でもこの作家、かなり頑固そうだからそれは無理か……。

(1995.12.16)
最終更新:2007年07月08日 18:54