探偵物語 II  赤き馬の使者





題名:探偵物語 II / 赤き馬の使者
作者:小鷹信光
発行:幻冬舎文庫 1999.2.1 初刷
価格:\600




 埋もれていた傑作! これは日本ハードボイルドの金字塔と言っていいのではないか? 真保裕一があとがきで書いているけれど、ブームに一年早かったゆえに埋もれていた作品なのだと感じた。

 おまけに札幌在住の私としては嬉しいことに、この物語は北海道に始まり北海道に終わる。札幌に始まるストーリーが、鹿討という架空の町(どう見ても鹿追町がモデル)で展開されて、網走の能取岬の対決に向かってゆく。前作では設定されたTVでお馴染みのキャラクターたちは電話線の向こう以外、ほとんど登場しない。まさに完全小説版の工藤俊作登場といったところだ。赤いスカイラインで荒野を駆る工藤探偵というのは、TVにはなかった独特の味わいである。

 テンポの良いストーリー運びと、癖のある人物たち。リアリティのある舞台設定。そして何よりもハードボイルドの鉄則に基!づいた決意と行動。ハメットの『赤い収穫』を髣髴とさせられるかもしれない。スタークのバイオレンス・アクションを思い出させられるかもしれない。

 プロットの確かさが生んだ、日本小説らしくない乾いた展開が、何とも小気味の良い一冊!

(2001.01.02)
最終更新:2007年07月08日 18:36