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朱夏


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題名:朱夏
作者:今野敏
発行:幻冬舎 1998.4.15 初版  
価格:\1,700




 今野敏の最近の警察捜査小説は、現代風俗に焦点を当てた事件を扱うものが多い。もともとこの作家はアクション畑だけに、敢えて事件を現代風に展開させるとなるとそちらのほうの問題提起小説の色合いが増す分だけ、事件のアクション性は落ちるような気がする。

 この作品はカバー・デザインからして本来の娯楽小説、アクション小説の色合いの強い『触発』のような作品かと思って期待したのだが、やはり現代日本の問題の一つである少年犯罪に焦点を当てたものだった。

 世代間断絶に関しては、今野敏はよく登場人物に語らせているが、この小説の主人公はまさしくぼくと同世代。かつて団塊の世代との断絶を登場人物に語らせた今野敏は、この作品においては、ティーンエイジャーの世代断絶と理解できない部分を書こうとしている。

 理解できない部分を理解してゆく物語ではなく、理解できない部分を持った少年犯罪のありさまを嘆いている小説のように思える。主人公を硬骨漢の刑事として描き、その妻の誘拐事件を縦軸に理解の及ばぬ少年犯罪について描いている。小杉健治『それぞれの断崖』のストレートさには及びもつかないが、今野敏の作家的方向を取り敢えず匂わせる作品であるのかもしれない。

 ただ最後まで理解不能として片付けてしまう少年犯罪者に対しては、世代としての闘いの構図しか見えてこない点が残念だ。問題を現代への警鐘として提起するならば、より踏み込んでいかねば表現自体は不足の感があるし、娯楽小説の題材として使うならば、より娯楽面を強化して欲しい。少しずつ齧ってしまっている点が、何とも半端な読後感であったのだ。

(1998.10.04)