レッド





題名:レッド
作者:今野敏
発行:文藝春秋 1998.8.10 初版  
価格:\1,571

 現代風俗もの以外の娯楽小説ハードカバーはひさびさなので飛びついてみたが、何とも欲張りな作品。題材がけっこう大きすぎる割に人数もページ数も足りていない気がする。その短いページ数ですべてを片付けてしまうのが良くも悪くも今野敏の作品なのだが、こうした多元的な捜査ものの場合、この程度の質量だと、どうしたって読後感が軽くなる。

 そこそこの面白さを持ってはいるけど、読後に残るものがない、というやつである。そうした読中の面白さを求めるにはいいのだけど、それならそれで他にももっとオススメ本があったりする。やはりいろいろな意味で物足りない。これがノベルスならそうも思わない。でも安くない金額でけっこう渋めの装丁でとなると内容に不満が残る。

 ぼくの基準で言っているので、必ずしも今野敏小説を特定して攻めたいわけではないのだが、どうしたって、少し応援している作家だけに今後に野望を抱いて大化けして欲しいのである。『蓬莱』がひととき話題をかもし出したように、この作家にはそれ以上の仕事をこなして欲しい。本作ではぼくは不足である。

(1998.10.04)
最終更新:2007年07月08日 18:16