リオ





題名:リオ
作者:今野敏
発行:幻冬社 1996.7.4 初版
定価:¥1,600

 『イコン』と同じ感想である。『イコン』がパソコン・ネットワーカー、『リオ』がコギャルを主役に持ってきている違いこそあれ、ブーム本の域を出ていない気がするのは、やはり読みやすさ、そこそこの面白さがあるゆえの副作用とも言うべきか。

 ぼくとしてはこの作家、格闘技とかサバイバルとかを前面に出したシリーズのほうが、なぜか好きである。逆にこういうブーム本のほうがハードカバーになっているのが出版社の安易な姿勢を感じさせて逆にどうもいやだ。ウチワ誉めしている評論家の、世間に少しも通用しないような帯のセールス・トークなど、出版界の饐えが匂ってさらに虫酸が走る。 

 世のそういう動向からもう一度離れて、今野敏しか持ち得ないものを強力な武器にして、彼の本来面白いと言っていい小説世界を繰り広げて欲しいと思うのは、ぼくだけであろうか?

(1996.07.19)
最終更新:2007年07月08日 18:11