38口径の告発





題名:38口径の告発
作者:今野敏
発行:徳間ノベルズ 1995.2.28 初版
価格:\780(本体\757)




 ボディガード・シリーズ以外は初めて読んだけど、うーん、主人公が庶民的過ぎるところへ持ってきて、いい刑事、悪い刑事、ヤクザ者、チャイニーズ・マフィア・・・・と、ページ数の割にはサービス満点の状況を、その頼りなき双肩に乗せられちゃってちと危うくて見てられない、っていう小説だったのだ。

 庶民的ならもっと庶民的であってもいいし、そうでないなら、もっと積極的であっていい。子供や看護婦など抵抗がなさすぎで、よい刑事も含め、あまりにも主人公への救いの手が多すぎる。こんなだったら苦労しないよ、と思っていると、本当に彼の苦労はクライマックスの一コマくらいなのだな、これが。

 「読者の知」パターンの小説で、真犯人も主人公の危機も、読者のみが知っているというパターンなんだけど、こういう作品こそ、主人公の一視点のみで描かれるべきであるような気がしてならない。その視点であれば、ぼくらは常に主人公の庶民性に同調できるし、周囲の救いの手もこれほど必要としない気がする。

 というわけで、警察小説としても、ミステリーとしても、巻き込まれ型熱血小説としても、視点が混在したがためにいろいろな意味で中途半端に終わってしまった作品でした。今野敏は面白作家なだけに、こういう本はぼくは誉めないのだ。

(1995.08.09)
最終更新:2007年07月08日 18:05