血路 (「バトル・ダーク」へ改題)





題名:血路
作者:今野敏
発行:祥伝社ノン・ノヴェル 1995.4.30 初版
価格:\780(本体\757)




 今度は都市ゲリラ対策っていうことで、サバイバル、対決などの要素は前作までとそのままに、話はより過激に、大掛かりになってゆき、作者の冒険小説的な懐の深さを感じる。『蓬莱』ではこういうシリーズを書いているっていう雰囲気がなかっただけに、けっこう驚きなのである。

 一作目は環境破壊、二作目は自然、三作目では都市における危機管理、とそれぞれに、娯楽性だけでは収まらないなにかしらのテーマを抱えたところ、ぼくは作者の書き甲斐みたいなものを感じてしまう。ぼくが日本の作家に常々求めているものは、そういう意識的な「書きたい衝動」みたいなもので、それがある作家は小説の遊び方もよく知っているという気がする。

 だから遊び心を持った作家と作品が好きだし、モチヴェーションを持ってくれないと逆に読者としても困るわけだ。そんなわけで三作一気読みの価値ありです。ぜひ皆でこの作家に期待しちまいましょう。

(1995.06.12)
最終更新:2007年07月08日 18:04