夜より暗き闇


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題名:夜より暗き闇 上/下
原題:A Darkness More Than Night (2001)
作者:マイクル・コナリー Michael Connelly
訳者:古沢嘉通
発行:講談社文庫 2003.07.15 初版
価格:各\952

 扶桑社ミステリーから『シティ・オブ・ボーンズ』は早川書房のハードカバーへ、本書『夜より暗き闇』は講談社で文庫でと、いわゆる版権争奪戦を強いられ、ついに翻訳・出版の順序まで前後してしまうという、読者にとってはあまり有り難いとはいえない混乱を見せつけられることになってしまった本シリーズ。ボッシュ・シリーズの根強さに加えて『わが心臓の痛み』で登場したテリー・マッケイレブをクリント・イーストウッドが主演映画化したことなども版権争いに拍車をかけたのかもしれない。

 途中参加するにはとっつきの悪いボッシュ・シリーズに比してマッケイレブについては元々がシリーズ・キャラという性格ではないため、謎解きとしてのミステリー、あるいは警察捜査小説としての醍醐味についてはより色濃く持っているように思う。そちらの方向での面白さを生かして、ボッシュのシリーズとしては外伝のように単独で楽しめるのが本作品ではないかと思う。

 あるいはヒエロニムス・ボッシュ、通称ハリー・ボッシュという刑事を知るためのガイドブックに使えるかもしれない。ボッシュのシリーズのダイジェスト的性格をも受け持っていると言えるかもしれない。ついでに言えばマッケイレブや『ザ・ポエット』の主人公である記者ジャック・マカヴォイについてのダイジェスト紹介を含めた、すべてのコナリー作品を一気に齧ることのできる小説であると言えるのかもしれない。

 シリーズが重なり、ある節目を迎えようというこの時期にだからこそ、コナリーが一旦立ち止まって、振り返るべき過去に、ボッシュに、マッケイレブに、もう一度フォーカスを合わせたこのような作品を里程標のように立てておきたかったのかもしれない。ぼくにはこの作品はそのように見えてならない。

 本作品自体の持つミステリーの面白さ。犯罪者との対決。捜査に執着する側の個人的な動機。ロスと言う街を俯瞰して、きらびやかな夜景の中に潜む暗闇を見据える二人の刑事の視線が象徴的に描写される一シーンは、ある意味コナリー作品そのものの象徴と言うべきシーンであるのかもしれない。

 日本での登場順序は少し前後してしまったものの、本作はそうしたシリーズから少しだけレールを外れたところですべてを見据えなおすという意味の重要な位置づけを与えられたものであるということで、是非コナリーの濃いファンの方々にも、コナリーを試食してみたい方にもお薦めしておきたい作品である。

(2003.07.27)