ブラック・ハート


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題名:ブラック・ハート 上/下
原題:The Convrete Blonde (1994)
著者:マイクル・コナリー Michael Connelly
訳者:古沢嘉通
発行:扶桑社ミステリー 1995.9.30 初版
価格:上\560/下¥540

 この作家のエネルギーというのは何なのだろう。ロサンジェルス・タイムズ紙でジャーナリストとしてのキャリアを積んでいるが、年齢は、まさにぼくと同じである。欧米の作家としては若手に属してしまうだろう。それだけにエネルギッシュなものがあり、ハリー・ボッシュというひとりの刑事に注ぐ情念は相当のものである。技巧に走っているわけでもないが、ボッシュの独白は常に先鋭的で、今にもはみ出しそうで、この刑事のモチベーションは何なのだろう、この作家のモチベーションは何なのだろうと、首をひねらされること頻りであった。

 そして一作、二作と、骨太のプロットにしっかりと振り回されて読んできた今度の作品は、これまでの作中でもボッシュをハリウッド署に左遷した原因として語られていたコンクリート・ブロンド事件のクローズアップである。今度の事件の場合は、本格推理ものの好きな読者も飛び付きそうなプロットも用意されていて、事件の捜査そのものを楽しむことだけでも十分に行けるのではないだろうか。

 その上、リーガル・サスペンスとしての一つのドラマが同時平行して現実の事件の隣を走る。やがてこの二つの世界はボッシュの目前で激しく交錯を見せるのだが、こうした劇的な運びは相変わらずこの作家の独壇場である。さらにこの上に展開される恋愛小説的場面だが、これまた相手の女性がひとつのしっかりした存在感を持っていて、厚みを加えているように思う。うーん、いろいろな意味で小説的魅力に溢れた、全編一気読みも保証できるほど優れたエンターテインメント小説なのだ。

 今年の『このミス』ではエルロイの作品とぼくの中では首位を争ってしまったのだが、一作品がきれいにまとめられた形としての本書のほうを最終的にトップに据えてしまった。

 主人公はダーティ・ハリー系のはみだし正義漢なんだけど、いろいろボッシュならではの個性的な背景を与えられているのは一作目から続いている魅力で、本書によって彼の彼らしさはまたも深く掘り下げられてゆく。エルロイなら一冊の半分ほどで葬りそうなほど危険な情念を秘めた主人公だと言えそうである。確かに長く持つ主人公ではなくシリーズも近々終わるんだろうという予感を秘めた作品であった。

(1995.11.05)