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ホプキンズの夜



題名 ホプキンズの夜
原題 Because The Night (1984)
著者 ジェイムズ・エルロイ James Ellroy
訳者 小林宏明
発行 扶桑社ミステリー 1990.07.25 1刷 1990.10.1 2刷
価格 \600(本体\583)

 凄いなと思うのは、この作品がシリーズ前作『血まみれの月』とほとんど間髪を置かずに発表されていること。作者が続け様に仕上げたのだとすると、よほどこのロイド・ホプキンズという特異なキャラクターが、作者の中でざわめいていたに違いない。

 まともな学校教育をほとんど受けていないエルロイというこれまた特異なキャラクターにペンを執らせるものは何なのだろうと考えると、なにかしら背筋の寒くなるようなものを感じる。エルロイというのはやはり情念の作家なのだと思う。

 前作のストレートなサイコパスという犯人設定に較べ、こちらはジョン・サンドフォード辺りにデジャヴを感じるような----実際はエルロイのほうが先に書いているのだがこちらの読んだ順からこうなる----医学的立場の犯罪者が宿敵となる。彼が、ゾンビのように患者を意のままに操るという点が、妙に強引なプロットであるのだが、それを忘れさせてくれるのは、オウムや自己啓発セミナーなどですっかり馴染みになっている身近なマインド・コントロールの現実だろうか。

 そういう意味じゃ自らをマインド・コントロール下に置いているようなホプキンズとは、また違った意味で類似性が見られたりもするし、人間の精神の病む様子をこれでもかこれでもかと綴って行く恐怖作家エルロイ、といった一面が色濃く出た作品だと言ってよさそうだ。

  錯綜したプロットは、相変わらずで、ぐいぐい引っ張って行くものがある。警察イコール正義ではないという、警察と犯罪の関わりは、後のLA四部作でもかなり大きく扱われる題材であるが、この作品辺りでこの辺りの善悪混淆という不安定要素が作中に盛り込まれ、読者を落ち着かせなくしてゆく。

 最後まで無茶しかやらずに終わってゆくホプキンズのこのシリーズ。クレイジィ・ロイドのクレイジィぶりは、しまいにはこの街に何を呼び込んでしまうのか。そういった暗示でいっぱいの終章が、『自殺の丘』へと読者をも突っ走らせてゆこうとするのだ。

(1996.04.20)