血まみれの月



題名 血まみれの月
原題 Blood On The Moon (1984)
著者 ジェイムズ・エルロイ James Ellroy
訳者 小林宏明
発行 扶桑社ミステリー 1990.07.25 1刷 1990.10.17 2刷
価格 \560(本体\544)

 LA暗黒史四部作はシリーズものではあるが、特定の主人公を持たず、どちらかというと複数主人公の物語によるロス犯罪年代記という傾向が強い。だから、ロイド・ホプキンズという特定の警官を主人公としたこのシリーズには、エルロイに比較的遅くなって接触したぼくとしては、前々から興味を覚えていた。

 まずLA四部作ほどのテンションがそれ以前の作品でも保たれているかどうかが気になるところであったが、嬉しいことにそんなことはこちら側の杞憂であった。やはりエルロイの破滅的な世界は同じ破滅的なLAであったし、そこに生きるホプキンズという主人公は、その後の作品での熱情的な警官たちのプロトタイプであるとも言えそうだった。

 そして警官と彼が追う異常犯罪者との類似。動機は何であれクレイジィの方向性が少し違うだけと思わせるような登場人物たちと、彼らのもたらす凄まじいバイオレンスは変わらぬものだったのだ。

 そればかりか、狂った性犯罪者との相互描写による物語のストレートな進行と、息をつけぬ展開は、LAシリーズと違って一つのまとまった物語であるだけに、よりページターナーと呼びたくなるものがある。

 この詩人との追跡劇だけでも十分に読ませる上に、捜査小説と呼ぶだけでは手に余るロイド・ホプキンズのどろどろの過去がある。この一冊を手に取った読者は三冊を一気読みせずにはいられないに違いない。

(1996.04.20)