※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

慈悲深い死


amazon plugin Error : amazonから商品名データを取得できませんでした。時間をおいて再度実行してください。また、text=(文字列)パラメーターを利用することで、商品名データを取得せず表示することができます。
題名:慈悲深い死
原題:OUT ON THE CUTTING EDGE ,1989
作者:LAWRENCE BLOCK
訳者:田口俊樹
発行:二見文庫 1990.8.25 初版 1990.10.25 再版
価格:\550(本体\534)

 前作からまたもや三年。マット・スカダーのすべてが知りたければここまで読み進める以外にない。マットの生活習慣はどんどん変化しているから、ぼくらはその後の彼の生きざまを目撃するために、長い間隙を屁とも思わず新しいシリーズの局面に触れようとしなければならない。そしてここまで読んできたときに初めてマット・スカダーという探偵がその全貌をぼくらの前にさらけ出す。そして次作ではまたも新しい彼の新しい日々が露わになってくれることと思う。

 で、この本の最大の興味は、酒をやめてからのアル中探偵スカダーの姿である。AAに通うシーンはこれまででもお馴染みのもの。新たに加わるのはバーに入ってコーラを飲みながら語り明かすとか、飲んだくれの女と半共同生活に入るとか、さらに禁酒に対し強くなったスカダーの姿なのである。彼の関わる都会の何処もがアルコールの臭気に覆われているように見えてしまうのは、むしろ彼が酒をやめたせいであるかもしれない。

 酒をやめ、協会への10%寄付の習慣もなくなり、代わりに新しく物乞いたちへの施しを意識的に始めた新しいスカダー。思えば10年以上もの年月が彼の上にも経過しているのであり、この本はそうした作品内時間の重みをも抱えて、初期長編には見られなかった奥深い空間を展開させている気がする。そして初期の頃より見られたストーリーの語り口の巧さはさらに熟成していると思う。

 今回ぼくはスカダー・シリーズ7冊を一気読みしたわけだが、当たり外れがなく、すべて一定の基準を陵駕している上質のハードボイルド・ミステリーといえるように思う。長期にわたるスカダーの変化を楽しむために、基本的に順番に読むことをお勧めします。

(1991/11/10)