ギフト





題名:ギフト
作者:飯田譲治/梓河人
発行:角川ホラー文庫 2000.6.1 初刷
価格:\619




 これはとってもな佳品である。ことによっては『アナザへヴン』より完成度は高いか。同じ作者の長大な作品『NIGHT HEAD』よりは絶対確実に身が引き締まっていて美味しい。

 この合体作者たち(飯田譲治原案、梓河人著と言ったコンビなのかな?)は、映像作家(言わずと知れた飯田譲治の方)の発想に基づいているだけに、全体の構成、特にラストへの収斂のしかたが大変に上手い。何よりもその一点に多くの庶民のハートを掴みつつ運んで行ってしまう、コツとかテンポといった、小説としては非常に重要な要素を抑えているのだ。

 記憶喪失者が自分を捜す。過去の薄闇の向こうにはあまり知りたくない自分が見えて来そうな気配がする……と書くと真保裕一『奇跡の人』みたいでもあるが、もちろん似て非なるストーリーである。タイトルの『ギフト』というのが、ラストで、大向こうをうならせる。やるなあ、と言わせしめる力業は、見逃せないところだと思う。

 でも、なぜ、この作品、ホラー文庫なんだろう?

(2001.01.02)
最終更新:2007年06月28日 00:51