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アナザヘヴン





題名:アナザヘヴン 上/下
作者:飯田譲治/梓河人
発行:角川ホラー文庫 1998.4.25 初刷
価格:各\648

 今年はある程度有名な国内ホラーはどんどん読んでしまおうと思う。『リング』で火をつけられてから、そう思い始めた。国内でのホラーブームは、小説でも映画でも、もはや侮れない存在として脹れ上がりつつある。何よりその根底に面白いという確かな手応えがある。

 本書はまるで『ハンニバル』のような食人付き連続殺人事件に始まる。その殺しの現場のえぐさに釣られて読んでしまったのだけど、事件の方は人間界を少し離れて荒唐無稽化してゆき、若干ぼくとしてはついて行けなくなりかける。やばいな、という雰囲気。でもそれを繋ぎ止めるものがこの本には十分にある。

 事件そのものの面白さ、奇怪さは勿論あって基本的にはこの本の魅力の半分はそこにあるのだと思う。しかしそれ以上に、実はキャラクターたちをじっくり書き込んだ丁寧な作品であるという点にもこの際注目しておきたい。キャラクターたちの魅力は、彼らの親しみやすくとぼけたリアリティのある会話や家族の存在を存分に書き込んだことから生まれていると思う。人間たちの掛け合いの面白さがこの作品の魅力の半分であり、ぼくにはこれは意外な収穫だった。

 そちらのリアリティが、『幻魔大戦』じみた荒唐無稽な悪の存在を串刺しにしているために、この作品は結果的に冒険小説のスリルを持っている。主人公である二人組の刑事ばかりではなく、周囲のキャラたちへの愛着が作られるからこそ、彼ら(彼女ら)を守ろうと身を投げ出す主人公たちの戦いがスリリングで、なおかつ雄々しい。

 後半になるとこれはもう何と言うか恋愛小説! 思いがけぬ展開ではあったけれど、なんでもありルールで面白小説を作るとこうなるのだ、という料理法にぼくは脱帽した。笑いあり、涙ありの面白ホラー大作! どうです? 不思議な本でしょう。

 *ちなみに現在ドラマ放映中の『アナザヘヴン~Eclipse』と映画化された『アナザヘヴン』はそれぞれにリンクする別の物語らしい。興味津々である。

(2000.06.17)