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セーフハウス


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題名:セーフハウス
原題:Safe House (1998)
著者:アンドリュー・ヴァクス Andrew Vachss
訳者:菊池よしみ
発行:ハヤカワ文庫HM 2000.1.31 初版
価格:\900

 なんと本作からバーク・シリーズも文庫新刊で出版。しかも翻訳も佐々田雅子から菊池よしみにバトンタッチ。新刊の文庫化はジョン・サンドフォードのシリーズも同時発生ということで、ハヤカワは、ロング・シリーズの新刊を買いやすくという、消費者には大変ありがたい戦略に出てくれたのか? 思えば、新潮・扶桑・講談社などは売れ筋の作家であるスティーヴン・ハンター、トマス・ハリス、マイクル・コナリー、パトシシア・コーンウェルなど全部、全部、文庫新刊で発売しているのだ。ディック・フランシスやロバート・B・パーカーもぜひ文庫新刊してください>早川書房

 閑話休題。思えばシリーズも10作目を数える。最初のころの粗削りでありながら、予想をくつがえす構成と迫力とで、多くの個性豊かなキャラクターを徐々に紹介してきたドラマティック・スタートダッシュはこのシリーズの白眉だったが、その後、幼児虐待の追跡者であるバークの内面に傾斜した中盤があった。そしてこのところはアメリカの現代的な病巣を抉り抜くことにバーク・シリーズの方向は少しずつ路線変更しつつある。

 その新たな転換点となっているのが本書と言えるのか。この作品の驚くべき特徴は、何とアクションのスケールアップ。確かにウェズリーの影がたまらなく怖かった『ハード・キャンディ』あたりは、壮絶なクライマックスを迎えてはいたけれど、チームが一丸となってけっこう巨大なテロリスト集団と火線を交えての戦いをやらかすというのは、このシリーズのイメージ外だった。

 今回は堂々バークと互角にやり合う謎の人物が登場……。バークはいわゆる「悪党パーカー」のように周到な犯罪者であり、徹底したプロフェッショナリズムによって管理、制御された非常にディフェンスの効いた行動に終始する主人公である。かつて馳星周がFADVではそのハンドルがバンディータであった頃、バークは基本的に「へなちょこ」だと評したが、それもそのとおりで、バーク自体は強くはない。むしろ弱いがゆえに備えている。バークの行動の規範はおよそあらゆる敵対的なものごとへの不安であるから、異常なほどに神経を尖らせる。徹底してディフェンシヴな行動こそがバークの規範である。これにタメを張って堂々と勝負してくる人物の登場はけっこう読者にもショックだ。バークにとってはいかほどの問題か、推して知るべし。

 確かにウェズリィ以来の緊張感がバークとその仲間たちを包んできた。うーむ、思いがけない展開。そしてなになに? あの男ウェズリーは本当に死んだのか? ひさびさに社会問題以上に、アクション、サスペンスで駆け抜ける快作の登場……と言っていいと思う。

(2000/04/08)