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罪深き誘惑のマンボ


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題名:罪深き誘惑のマンボ
原題:The Two Bear Mambo (1995)
作者:ジョー・R・ランズデール Joe R. Lansdale
訳者:蒲田三平
発行:角川文庫 1996.8.25 初刷
価格:\760



 ハップとレナードのシリーズでは、本書が初めて邦訳され、日本の読者に紹介されたわけだが、今こうして9年を経た現在読んでみると、当時の読者にとって、本作の面白さは驚愕に値しただろうと想像できるものの、それでも翻訳の順番を違えたことにより、読者が強いられた読書的娯しみの犠牲は大きなものだったと判断せざるを得ない。

 とりわけ本書に継いで邦訳された『ムーチョ・モージョ』は、オリジナルでは本書に先駆けて書かれた物語であり、なおかつこの二作には連続性があるというところに、読者の悲劇がある。ましてや本書の事件に乗り出す二人のダーティ・ヒーローのモチベーションは、失踪した女性弁護士を探すというところにあるからだ。その女性弁護士は『ムーチョ・モージョ』ではヒロインでさえある。彼女の説明無しに、いきなりこちらの作品に入る、しかも事の真相がこれである、というのは、やはり相当にシリーズ翻訳の悲劇と言わざるを得ない。

 読んでいない方には何のことやらわからないだろうが、とにかくこの二作、原作の書かれた順番通りに読まないと、少し辛いということなのだ。作家にしたって、これだけ懇親のエネルギーをぶつけて書いた二つの作品、順番を違えて読んで欲しくなどあるまい。当時のランズデールという作家が、駆け出しでなければ、こんなこともあり得なかったに違いない。

 愚痴はともかく、ぼくはまっとうな順番に読んだことで、それなりのカタルシスを得てはいる。しかも作品の質が質だ。二人のお気楽風キャラが、相変わらずの無職で無責任で自由奔放な登場をするにも関わらず、物語の途上で、笑いさえなくなるほどに最悪の試練を経験することになる。この世の生き地獄を味わうまでに、伏線はいくらでもあり、どこをどう掘り起こしてみても、悲劇的要素しかない一件なのに、彼らはとことんストレートに立ち向かう。

 ホンモノの探偵でもないのに。うち一人は黒人でホモセクシュアルだというのに。乗り込んだ街は、公民権運動などなかったような歴史を独自に持ちつづける差別と迫害と暴力の世界だというのに。これほどタフな物語で、しかも徹底して命の危機に瀕しているのに、こいつら二人のアンチ・ヒーローは戦うのだ。なけなしの意地と才知だけを武器にして。

 ふざけた二人の、一瞬の真剣味が、なんともほろりと来る一編。異常で破天荒な世界に風穴をあける汚れた天使たちに、惚れ惚れとするホットな一冊である。

(2005/07/10)