葬列





題名:葬列
作者:小川勝己
発行:角川書店 2000.5.10 初版
価格:\1,500

 何だか『OUT』みたいな始まり方……と思いきや、実はこれそうしたミステリー、サスペンス系ではなく、むしろ乾いたドンパチを主体とした和製では珍しいクライム・アクション。しかもクライムよりも遥かにアクションの方に重点が置かれているという意味で。傑作の噂が高いので後ればせながら手に取ったのだけれど、これは今年の目玉。『このミス』の採点締め切り直前になった今でも自分の最終候補にはしっかりと残っている作品。ま、それほど面白かったのである。

 まず、である。キャラクターの書き分けが凄いのだ。だれもかれもがかなり凸凹した癖があり、極度に個性的。その書き分けだけでも十分に楽しめるのに、展開は中盤からいきなりスピーディに様変わりする。そして裏の裏、そのまた裏へと、玉ねぎの皮をむいてゆくような嘘と疑惑の皮を何層にもまとった真実の奥深さ。

 映画化するならこの火器弾薬の消費量から言って、ジョン・ウーを置いて他にないとぼくは感じた。まるで『男たちの挽歌』だ。いや、『男たち』じゃない、『女たちの挽歌』だ。とにかく乗り乗りのノワールの凄玉が登場してしまった! 右に倣えで、シリーズ化賛成! 続編に期待したい!

(2000.11.04)
最終更新:2007年06月17日 22:28