ペリカン文書







題名:ペリカン文書
原題:THE PELICAN BRIEF (1992)
作者:JOHN GRISHAM
訳者:白石朗
発行:新潮社 1993.2.20 初版
価格:\2,200(本体\2,136)



 前作『法律事務所』は、前半がたるくって、後半部分で一気に面白くなった気がするけど、この作品ははっきり言って全編疾走、また疾走のリズミカルな面白小説であった。この面白い本の感想はもっとあってもいいと思うけどなあ。

 グリシャムというのは、まあ、これと言って特徴がないと言えばない。個性的な部分でも、ずば抜けたものは感じられない。風変わりな登場人物たちも洒落た会話もない。だから、そういう点では、非常にオーソドックスな書き手であるのだと思う。作品も、まあ地味な部類なのだろう。ううむ、しかしこの作品はそんなに地味ではないぞお。

 まずいろいろな物語の面白さをモザイク様に集めたような気配がある。ことによるとこの切れ切れの面白さが集中力に欠けていると映り批判を向けられることもあるかもしれない。でもまあ面白ければいいじゃないか派のぼくとしては、こういうのは一応歓迎しておきたい。

 国際的な暗殺者も登場する。環境破壊と油田建設との社会的テーマも出て来る。FBI や CIA の暗躍もある。数多くのプロフェッショナルたちと対峙する飛び切りの美人女子大生もある (映画ではジュリア・ロバーツがやるそうだ)。とにかく映画的シーン、シーンの連続だから、理屈抜きのエンターテインメントである。

 まだまだこの作家多々、課題は残されているのかもしれないが、全米ベストセラーであることは『法律事務所』以上に証明されると思う。それほどに弛みを感じさせない緊張感が連続する。ぼく個人に関して言えば、読み出したら止まらなくなった、不眠の素でありました。

(1993.04.28)