スキッピング・クリスマス



[429] Client error: `POST https://webservices.amazon.co.jp/paapi5/getitems` resulted in a `429 Too Many Requests` response: {"__type":"com.amazon.paapi5#TooManyRequestsException","Errors":[{"Code":"TooManyRequests","Message":"The request was de (truncated...)

題名:スキッピング・クリスマス
原題:Skipping Cristmas (2001)
作者:ジョン・グリシャム John Grisham
訳者:白石 朗
発行:小学館文庫 2005.12.1 初刷 2002/12 初版
価格:\571

 そういえば、最近見ない。ジョン・グリシャムという作家の名前を。毎年のようにリーガル・サスペンスの逸品を世に送り出し、映画化作品もまた常に話題になってきたのに。

 日本では「超訳」とされる作品も二、三見られたけれど、そういうものには、なんだか活字文化を馬鹿にされているようで、どうも腰が引けてしまう。なのでぼくは『ペインテッド・ハウス』(ノン・ミステリーの素晴らしい作品だった)を最後にグリシャム作品にしばらくお会いしていない。

 本書はそうしたグリシャム・リストの山の中、思わぬ場所から久しぶりに転がり出てきた作品である。このクリスマスに合わせて気をきかせた出版社が文庫化してくれた。確かに本書が出た当時は、グリシャムは超・売れっ子で、しかもあのグリシャムがこうしたノン・ミステリ作品を、ということで少し話題になった。

 ぼくはそのときにパスした人間だ。もしあの『ペインテッド・ハウス』を読まなかったら、あるいはこれまでのグリシャム作品の中に、ミステリー以外の要素、純然たる物語としての面白さを感じていなかったら、今度の文庫かもパスしてしまったのかもしれない。

 グリシャムはただのミステリ作家ではないと気づかせてくれたのが『ペインテッド・ハウス』ならば、本書のような短いクリスマス中篇を手にとれば、さらにストーリー・テリングの巧緻を極めた作家としての新グリシャムの才能をぼくらは確信することができるだろう。

 エド・マクベインがエヴァン・ハンターの別名を使い分けたように、このグリシャムは、あのグリシャムではないのだが、しっかりしたホームドラマを書くことのできる一流の文章家である。何よりも、ラストシーンの美しさ、クリスマスをスキップしたくてたまらなかったクリスマス・アレルギーみたいな主人公一家が、最高のクリスマス・プレゼントを供することのできたラストシーンは、思わずほろりと来る。

 ハートが温まるストーリーを人が心のどこかで根源的に求め続ける限り、こうした作品はいつまでも必要だと思う。息子がもう少し大きくなったら、是非読んでもらいたい、と思うような本である限り。

(2005/12/25)
最終更新:2007年06月17日 21:11