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触角記




作者:花村萬月
発行:実業之日本社 1995.9.25 初版
価格:\1,500(本体\1,456)

青春小説・・・・というよりかポルノかなあ。思えばこの作者は性描写と暴力描写に生彩を発揮する人であり、そういうところに文章の巧さとイメージを掛け合わせて小説の想像力の世界を気ままに作って行っちゃうという印象が深い。だからこういう濡れ場ばかりが延々連続する世界というのは、今に始まったことではないし、今や萬月作品の要所ともなっているように思う。

 でもここまで濡れ場ばかり延々読んできて、これまた濡れ場小説かと思うと、同じ愛の形態のバリエーションもいいかげんうんざりしてきているというのが、最近の萬月読者の実態なんではないでしょうか? こういうのを要求する版元も版元で、そろそろ彼にゆったりした時間と原稿料をプレゼントして、第二の『ブルース』を作らせてあげなよ、と思ってしまう。その方が日本の小説界にとってもはるかに財産になると思うのだ。

 それをやおら若い才能をこうして作中人物の精のように気前よく世の中に放出させ続けていてはどうも、もういけないと思うし、萬月さんだってこうして濡れ場と喧嘩を書いていりゃいいのだ、と思い込んでしまうのじゃないか? 一時期超常能力や哲学の世界に冒険心を起こしたりしてみても、やはりすべてがなにかの亜流でしかない作品をこうして書き続けている限り、読者に『ブルース』のときのあの新しい読書感覚みたいなものは芽生えさせてくれないのだと思う。

 文章の巧さではピカイチの才能を誇る萬月さんだからこそ、志水辰夫だって光っているんだ、先輩を見習えと言いたいところなのである。なんだかいつも日本出版業界の悪口言っている気がするなあ(-_-;)

(1995/10/03)