古惑仔 チンピラ






題名:古惑仔 チンピラ
作者:馳星周
発行: 2000.7.31 初版
価格:\1,600

 『古惑仔』というのは『男たちの挽歌』に匹敵すると言われる、チェン・イーキン主演映画のタイトルそのものである。

 香港映画マニアの馳星周はこの辺からタイトルを借用して来たのかな。ぼくは観ていない映画なのだが、この本を読んだことで、むしろ映画の方にも興味が惹かれてしまった。

 馳星周は、日本冒険小説協会の旧い仲である吉野仁氏ともども、FADVのアクティヴであった当時から香港映画が異様に好きであったように覚えているし、彼らは評論家の関口苑生ともども毎年年末になると決まって香港旅行を企画していたように思う。向こうでたらふく食っては食当たりを起こしたり、向こうの映画館で字幕なしでもアクションだけでわかってしまう香港映画の数々を見て来たりしていたように聴いている。

 馳星周が中国人を主役にして沢山の物語を書いているのは、一に新宿が好きであることと、二に香港映画が好きであること、そして最後にエルロイやヴァクスなどのノワールが好きであるということが次々に彼の人生に上乗せされたような結果なのだろうと理解している。

 単純に言って、短編は相変わらず下手だなあ、というのが馳星周に対してぼくの抱く感覚なのであるけれども、それでも前短編集『M』よりはだいぶいいと思う。何よりも香りとしてはデビュー作『不夜城』に近いものがあるところがいいのだと思う。

 それでも舞台設定が新宿あるいは香港。人物設定はほとんどが中国人。やっぱりどこを切っても同じ主題という金太郎飴のような反復に対して飽きが来てしまう。彼の作風のなかで骨格となっている悲観主義をあと少しだけ抑えて、救いのない話が連続する本というものの粘つきを、別の方角に向けていただけると嬉しいんだけれど。少し干して干からびさせていただきたいと言うか。あまりにじめついた感じがするので。

 しかし、そうすると馳星周ではなくなるのか。難しいところですねえ。

(2000.11.04)