ジャンゴ




作者:花村萬月
発行:角川書店 1995.6.30 初版
価格:\1,400(本体\1,359)

 例によって掴み所のないスタートを切る。カバーからすると音楽小説かとも思うが、むしろ延々ポルノ小説的な展開が続く。あっという間に読了してみると、うーん、これは変態小説だったのかあ、との印象。

 花村萬月のエッセンスをいつもながらに詰め込んだプロットは、これまでの花村作品の良くも悪くも同音異曲なのだが、性と暴力の描写のボリュームがうんとアップしたってところかな。そろそろ限界だろ、これでは、とこちらが心配になるくらい変態してくれちゃっているわけだ。

 と言いながら隠し味と言えるのはタイトルの「ジャンゴ」。作中ではジプシーのギタリスト、ジャンゴになぞらえているのだが、これは二重の意味が込められたタイトルだぞ、と西部劇好きのぼくは気づいてしまったのだ。

 マカロニ・ウェスタン華やかなりし時代の代表作のひとつとして「続・荒野の用心棒」というのがある。これの原題が「ジャンゴ」。フランコ・ネロが扮する凄腕の主人公ジャンゴが、欲に溺れた唯一の機会に、捕えられ、早撃ちの得意であった手をぐしゃぐしゃに潰される。その彼の復讐と皆殺しの詩がこの映画なんだが、まさに今回花村萬月が書いて見せたのが、現代版のジャンゴであったと思われる。作者は多分見てるはずだな、この映画・・・・とぼくは思っちゃいました。

 さて、この先、花村萬月はどういう方向に進むのか? ぼくにはどうも他の方向っていうのが見えてこないんだけど・・・・。

(1995/08/18)
最終更新:2006年11月23日 20:37