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アイム ソーリー ママ





題名:アイム ソーリー ママ
作者:桐野夏生
発行:集英社 2004.11.30 初版
価格:\1,400



 すっかりノワール系に染まってしまった桐野夏生だが、最近はその針も極端に振られるようになってきている。エロとグロと狂気に囚われた醜い女たちを描いて『グロテスク』『残酷記』の救いのなさは、過激極まりないものだったが、その延長上にあるこの作品は、は女性版シリアル・キラーの血と炎で綾なされた一生の物語。

 アメリカンなシリアル・キラーのようにクライムの匂いが格段するわけでもなく、日常の狭間にふと口をあけた狂気の洞のような存在として描かれる、悪のヒロインでもなんでもないただの醜い中年女だからこそ、桐野の殺人者は怖い。

 孤児とて娼館で育ち、娼婦たちに虐待される幼年期。施設に住み込みながら学校へ通う少女時代。そこを一息に抜け出したアイ子は、その後殺人と欲望の暗いトンネルに入り込んでゆく。

 かといってアイ子に照準を合わせるばかりではなく、第三者の物語を連作短編風に紡ぎながら、それらの物語の軸に巣食う殺人者の存在を、様々な異形の死を通して描いてゆく。

 最後の最後まで悪が悪であることを認識しないまま、幻のママだけを求める姿が同情を誘わずただただ醜く汚らわしい存在である。乾ききった存在の極北を描いて、まるでジム・トンプスンのようなノワールを駆けてゆく桐野夏生という作家は、一体どこへゆくのか?

(2005.01.16)