女彫刻家





題名:女彫刻家
原題:The Sculptress (1993)
作者:Minette Walters
訳者:成川裕子
発行:東京創元社 1995.7.20 初版
価格:\2,600

 面白い! 去年のベストを席捲したミステリーだけにちと気になっていた未読本だったけど、こんなことならきちんと出版時に読んでおいて「このミス」アンケートの上位に入れておくのだった。

 何より主人公になる女彫刻家の異常な外観・異常な言動・パワーと知性がいい。まさにレクター以来の刑務所の恐怖役ではないだろうか。こういう人なら「ストーン・シティ」や「グリーンリバー・ライジング」の極悪刑務所の中でも十分異彩を放つんだろうけど、残念ながら女性なんだよなあ。女性と聞いて頭に描くのはFBI心理分析官が言っていた女性の無動機連続殺人鬼のケースは一件もないということ。無動機の殺人情動は男特有のものらしいという観念であり、それがまず、この女彫刻家を見る視点としてぼくの側にあるということも重要な要素になってしまったかもしれない。

 この本は、一貫してこの女彫刻家の実態の追跡小説であるから、最後まで、いや読後までこの女の存在感こそがこの本の価値や興味を高からしめているのである。

 また素人探偵役が失意の女性作家ってことで普通なら物足りなくもあるところだけど、どうして失意なのか簡単に明かしてくれない意地の悪さなど持ち合わせているところみると、ミネット・ウォルターズってただものじゃないぞお。そしてもう一人ミステリアスな登場の仕方をしてくれる元刑事の扱いもなかなか存在感あっていいのだ。

 フーダニットを貴重に置きながら、こうして主要な面々にしっかり命や謎を吹き込んでくれているところがこの作品の上質なところだと思う。凄い作品なので未読の方はぜひ手に取ってください。

(1996.02.03)