スズメバチの巣


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題名:スズメバチの巣
原題:Hornet's Nest (1997)
作者:Patoricia D. Cornwell
訳者:相原真理子
発行:講談社文庫 1998.7.15 初版
価格:\933


 これはひどい。端的に言ってひどいな、と思うのだ。あらゆる意味で中途半端な小説である。多方面に渡って出来の良い才能豊かな人が中途半端なものを目指すとこうなってしまうという悪しき見本と言っていいだろう。リラックスして楽しんで書いている様子がうかがわれるなどの巻末の訳者の弁解は、この作品の低質さには何の効果もないと思う。

 ではいったい何が中途半端なのだろう。まずは一番鼻につくのがユーモア。笑えないブラックさは、読書において最悪である。フロスト・シリーズの人気が作者の意図の片隅にあるのなら、それは大きな誤りである。この作者はヒステリックで笑いのない主人公を描くのは上手だけど、その反対は遠慮願いたい。

 猫の視点や、神様の視点での文体というのも、おふざけが過ぎて、一切れの好感すらぼくには持てない。ここまでふざけるなら、他の点でもバランスよくふざけていただきたい。

 どうにも半端な視点の問題は随所に見受けられる。説の途中で視点が往復するというのはとても読みにくい。ずっと一人称で創作してきた作者がたまにこうした三人称を使うとろくなことがない、という証明のようである。

 最後に。プロット自体が面白くない。いくらモジュラー型小説とは言え、もう少し一つ一つの事件が長いレンジで出てきてくれないと、プロットのいいかげんさしか感じることができなくなる。一つ一つの事件が発生した途端に解決してゆくために、全体が細切れの印象であり、これは本来のモジュラー型という図式には当てはめにくい。これも要するに中途半端なのだ。

 もっといろいろ言いたいことはあるけれど、こんなシリーズ売れ線作家だからと言って翻訳することはない。もしもぼくが講談社のマーケティング部門であったら、本筋の検屍官シリーズの売上にまで影響のありそうなこのシリーズの邦訳は打ち切りたいところである。でもこの一作目が発売され、それなりに売れてしまうようでは、望みがないか……。

(1999.03.07)