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接触




題名:接触
原題:Unnatural Exposure (1996)
作者:Patricia D. Cornwell
訳者:相原真理子
発行:講談社文庫 1997.12.15 初版
価格:\762


 シリーズ当初は大胆に環境を変えていた本シリーズも、最近では少しずつ変化のペースがスロー・ダウンし始めている。今頃になってロンドンでのマークの死にようやく視線を向けるケイの姿を見るなんて、まさか予想もしなかった。まあ、とにかくこの手のサイド・ストーリーに付き合っているうちに、欠かせなくなったシリーズではある。

 この作家の最大の欠点ではないかと思うのだが、この作品もまた、導入と展開に力を注いでいるものの、解決部分がまるで手抜きのようにあっけない。キャラクターたちの出世に伴い、事件は巻を追うごとに大掛かりになってきたのだが、収束の仕方にこの頃ぼくは不足を感じる。ずばり、作品としてのバランスの欠如のようなものを感じてならないのである。

 本書でも然り。今度はケイたちの相手は、何と新種の伝染性ウィルス。世界から消えたという天然痘のウィルスの変種のようなものであり、これは人類を滅ぼしかねない。これらに立ち向かい、接触の危険を伴う検屍官という職業の過酷さも、壮絶に描かれていて、いつになくスリル満載のプロットである。まさにぐいぐい読んでしまう。

 それでも最後には、すべてが作り物っぽく見えてきてしまうのは何故なのだろう。大きく拡げ過ぎた話を、少ないページで無理矢理収束させているように見えるのはぼくだけなのだろうか? もしもベストセラー作家に向けられるプレッシャーが、話をより大きくし、結果的にバランスを欠如させてしまうのだとしたら、それは大変残念なことである。

 P・コーンウェルの新シリーズが、この1月に米国でお目見えすると言う。ケイ、ルーシー、ウェズリーらの状況が、どんどん加速して窮屈になって来ている気がする。変わらずマイペースなのはマリーノだけで、ぼくは今や彼一人のためにこのシリーズを読み進めているような気になってくることがある。これだけのキャラクターを造形できる作者が、話をどんどん肥大化し、安易な収束法に走るのは、かえすがえすも残念でならない。新シリーズに期待したくなってきたところである。

(1998.01.18)