警告





題名:警告
原題:Black Notice (1999)
作者:Patricia D. Cornwell
訳者:相原真理子
発行:講談社文庫 1999.12.15 初版
価格:\933


 いつの間にやらシリーズも10作目。バークのシリーズとシンクロしたかな(但し日本では)。そう言えば「ウェズリーは死んだのか?」問題もバークとシンクロしちゃった。すごい奇遇です。ネタバレに片足かかっているので詳しくは書きませんが。

 ぼくはマリーノが好きでこの本を読んでいるようなものなのだけど、シリーズというのは大抵の場合、ある意味でキャラクター中毒みたいなもの。ここまで冊数を重ねてくると、ぼくのような読者に取ってはミステリとしての骨組みなんかどうでもよくなって、むしろキャラたちのその後の運命とか、交わされる会話の中に伺える微妙な人間的ニュアンスという方に興味の中心が移行してしまう。特に顕著だと思う、このシリーズでは、それらが。

 前作がとても過激で思いがけぬ終結をしてしまっただけに、その後始末編みたいなものかな、本書は。狼男に襲われたのでは? と思わせるような少し気味の悪い連続殺人事件が発生したり、一方でルーシーがフロリダで危険な捜査中らしいし、ケイはフランスへ飛ぶ。パリの街が最も似合わない男マリーノの同行というのが傑作だけど、ぼくはこうした邪道の読み方がこの本の王道と信じる数少ない読者なので仕方ない。

 しかしこんな貴重極まりない設定の殺人鬼をサービスで持ち出していいのか? 事件にそれほど重きを置いていないんだから、こんな派手にしなくっても、などと思ってしまった。それとともにFADVでは、ケイの検屍シーンがないとこれは『検屍官』ではないというご意見があるのですね。検屍をするシーンが楽しみだというご意見も。ピュアな文科系畑のぼくには、理科系のシーンが苦手なので、ひさびさに復活した検屍シーンはそれほど重要な意味を持ちませんでしたし、今後検屍シーンが絶滅したとしても一向に面白さそのものへの影響は、受けないと思う。ただし、検屍官シリーズを「女の一生」のように読んでいること自体が非常に邪道であるかもしれないですけれども。

(2000.04.08)
最終更新:2007年06月17日 14:28