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チョーク!




題名:チョーク!
原題:Choke (2001)
作者:チャック・パラニューク Chuck Palahniuk
訳者:池田真紀子
発行:早川書房 2004.02.29 初版
価格:\2,300


 『ファイト・クラブ』『サバイバー』『インヴィジブル・モンスターズ』と、すべてにおいて既存の小説という概念を打ち砕くやり方を通してきたパラニュークという天才。彼が新作を書く毎に、今度はどんな場所にどんな奇怪な塔を作り上げるのだろうか、という楽しみが増えてゆく。

 奇怪な塔は最初は見えない。いつもジグソーパズルのピースのように部分をばらばらに発見することになる。それらの裏に出来上がる壮大な絵は、ピースだけからは想像もできなかったものであり、いつでもぼくらは予測を裏切られる。

 すべては脳内のヴィジョンであるかのようなモノローグであるのに、世界は一人称の視点を微妙にずらされてゆく。極めて得意な進行のスタイル。それがパラニュークであり、独特のテンションを維持したまま、緩みのないプロットが駆け抜けてゆく。日常生活に飽いている読者の中を吹き抜けるには、相当に強烈な風だ。

 本書は、珍しくホームドラマである。狂ってしまった母親のために膨大な金を捻出しなければならない主人公のヴィクターは、医大をドロップアウトして植民地村テーマパークで18世紀を演技するエキストラであり、同時にセックス中毒の強制治療グループに通っている。友人のデニーはセックス中毒を抜け出すために、町中から石をかき集め始める。ヴィクターは金を掻き集めるために、あらゆるレストランで窒息の演技を続ける。喉を抑えて(国際的なサインランゲージ)チョーク!

 あらゆる意味で風変わりで狂気じみているストーリーを、なぜか楽しく読めるのがパラニュークの凄さである。本に接している間中、てんでばらばらに見えるパラグラフ、いくつもの偶像、カラフルな風景、限りないフレーズのリフレインなどが、幻覚に近い効果を上げるが、読み終えたときにはすべてがうまく嵌っている。

 おろそかにされることのないイメージの破片たち。だからこそ読了まではわからない物語。すべての行程を歩き終えたときに、すっとつかえが取れて、呼吸が戻る。その間ずっとチョーク! と叫びっぱなしの読者を、きっと間違いなく、この本以前よりもずっと幸せな感覚の中へと解放してくれる。奇妙なサブリミナル。この人にか生み出すことのできないリラクゼイション効果である。

(2004.05.03)