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聖殺人者イグナシオ(改題:「イグナシオ」)

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作者:花村萬月
発行:廣済堂出版 1992.1.10 初版
価格:\1,400(本体1,359)

 修道院育ちの孤児でIQ190で美貌で殺人者であるところまでは『屠られし者、その血によりて』と同じ設定の主人公であり、似通った点は他にもある。街に出て知り合った相手に妙な店に連れていかれるところなど両作品ともそっくりの雰囲気だし、ハーフである点も似ているし第一、一方が紫苑(シオン)で一方がイグナシオなんて俗世間離れした名をしっかり与えられたりもしている。

 だから当然相違点の方が少ない。相違点その一、性別が今回は男であること。相違点その二、組織による暗殺ではなく、イグナシオはむしろただの自然な殺人者であること。前回であまりに荒唐無稽なバイオレンス小説にできあがってしまったので、少しリアルさをまして作り直したような作品であり、そのもくろみ成功してるかどうかはともかく作者自らあとがきでは「自信作である」ようなことを言っている。

 さてこの作品も要するに問題は急ぎ過ぎ。もっと長くという声も聞いたが、ごもっともでしょう。テーマは生と死であり、その一方を性で、その一方を暴力と殺人とで描こうとしたものらしいが、せっかく造形された特殊なピカレスク・ヒーローが、あっさりと描かれ過ぎてしまっているような気がするのだ。これが大した造形でなければ文句など言いもしないのだが、どうももったいないだけに言いたくなるのだね(^^;)

 さて萬月さんというのはキャラクターを決めたら、ストーリーなどほとんど決めないで、いいかげんな気持ちで書き出してしまうそうなのである。まあそんないい加減な態度でよくまあ小説が書けるものとは思うのだが、そこはやはり才能なんだろう。文章は巧いし、この人には、表現力という意味では天分すら感じます。だけどこれが両刃の剣というか、この人の最大の短所にもなり得るのである……俗に言う「才能に溺れる」といいう奴ですよ。

 しかし、まだ作家デビュー後間もないのに怒涛の如く書かされているんだろうから、今後の作品もすべて楽しみに読んでいくつもりであります。新しい世代を代表する書き手になることは、もう間違いないと思う。次作がどんなものか想像できないという点も、楽しみではある。ハードボイルドに専念してもらえれば一番言うことはないのだけどねえ。

(1992/02/07)