天切り松 闇がたり 第二巻 残侠





題名:天切り松 闇がたり 第二巻 残侠
作者:浅田次郎
発行:集英社 1999.9.20 初版
価格:\1,500

 『天切り松闇語り』が版元を変えて装いも新たに、しかも雑誌連載の続編との二巻本として再登場。二巻目とあって、前作の連作集に加わるまた再びの短編作品群というに過ぎないが、最初に一巻(当時は徳間書店発行でおまけに二巻目の登場は予想の外だった)を読んで早や3年目であったかと思うと、こちら側の月日の経過の速さに改めて驚かされるばかり。

 とにかく確約されたロマン、痛快、感動、そして様式美。それらを幻出するのが浅田節とでも言いたくなるほどに綾織られた名文、名文句の数々。世に二人といない文章の手練れが贈る大人のメルヒェン。

 この作家はやはり基本はピカレスクにあるのかと、『プリズン・ホテル』の頃が懐かしくなるような、愛すべき悪党たちの一世一代の名場面。前作の感動があるだけに約束された水準を上回りも下回りもしないけれど、変幻自在の語り口に酔い痴れる闇のありさまは、現代のうつつの世界を生きるぼくには、やたらに有り難く感じられる。浅田次郎の紛れもない代表作の一つだと思う。

(1999.12.26)
最終更新:2007年06月04日 23:17