王妃の館







題名:王妃の館 上/下
作者:浅田次郎
発行:集英社 2001.7.30 初版
価格:各\1600

 『プリズンホテル』の原点に戻ったようなホテルもの、と言って言えないことはないが、プリズンホテルと違って今度の宿泊先は、フランスはパリ、ルイ14世あやかりの地であるシャトー・ドゥ・ラ・レーヌ。光と影のツアー一行がこの由緒ある歴史的な王妃の館に宿泊ツアーに赴く話とて、舞台はずっとあちらで進行する。プリズンホテルが純和式の最底辺ホテルであるなら、こちらは美と歴史の超ゴージャスホテル。

 まずはツアー自体が一種の詐欺で仕掛けがたっぷりでこれからのストーリー展開が期待されるのだが、そこに参加するキャラクターたちが、『プリズンホテル』時代の浅田次郎の復活かと思わせるばかりに、誇張された寓話的な存在で、ある意味、極度の類型パターン。登場人物たちの数々は、これまで浅田作品のどこかで会ったことのあるような懐かしい感じの人ばかりであった。

 中には天才作家&編集者ご一行も混じったりしていて、物語はルイ14世のおわすベルサイユ宮殿に移り、王妃の館の存在理由が語られる。そこにも涙があり笑いがあり、光と影のツアーご一行にも涙あり笑いありの浅田節面目躍如。

 最近、とんとお笑い方面から遠ざかり、お涙頂戴物語に傾いてばかりいた浅田次郎が、なんだか元の離陸点に戻ってきたかな、と感じさせる嬉しいできの大スケール物語。長編を書いても短編の集積にしか見えなかった浅田次郎の、本当の意味での長編小説が登場したと言ってあげてもいいかと思う。

 ちなみにぼくは入院先でこれを読んだ。マ・ブルゴーニュという店の元兵士のシェフが夜毎、マダム・ディアナとプティ・ルイに運んだという残り物のポトフが、入院先のベッドで食べたくて食べたくてたまらなくなった。こんなに美味しい味を文章で描けてしまう作家の力量っていったい……!

(2001.12.15)