福音について 勇気凛凛ルリの色





題名:福音について 勇気凛凛ルリの色
作者:浅田次郎
発行:講談社 1998.2.25 初版 1998.4.8 3刷 
価格:\1,600

 読んでいてこれは『勇気凛凛シリーズ』三冊目のエッセイなのだと気づいた。買ったときには二冊目だとばかり思っていた。間を一冊抜かしているらしかった。

 直木賞をついに受賞するシーン、編集者たちとの感涙の宴、その前に『蒼穹の昴』で受賞を逃したときに相当悔しかったらしきこと、取材旅行の話、小説家を夢見て小説家になったことをつくづく喜んでいる姿、小説を書くためにしてきたこれまでの寄り道や文章技術の研鑚……、興味ある作家の作品裏面史である。とりわけ編集者との人間的関わりまで文章として表現されているのは珍しいし、本を作るということの裏世界を見ることができて大変興味深く感じ入ってしまった。

 作家は作品だけ読めばいいというのはもっともだし、作品の裏面を知らなくったって作品そのものは十分に楽しめる。作品からはみ出した部分をこんなに読む気にさせるのは、浅田次郎という作家の文章の魅力と、その強烈な個性からである。

 古めかしいが美しい文章を、ワープロを使わずに丹念に書いたと思いきや、いきなりギャグに走ってゆく、この躍動感は、浅田特有のものだ。エッセイでありながらけっこうそれなりに私小説的な超短編作品集としても楽しめるのがこのシリーズなのだろう。

(1998.06.17)