初等ヤクザの犯罪学教室





題名:初等ヤクザの犯罪学教室
作者:浅田次郎
発行:幻冬社アウトロー文庫 1998.4.25 初版 
価格:\495



 エッセイなのか小説なのか、読んでいてわからなくなるほど、正義と犯罪との間を行き来し、かつダイナミズムに富んだ本である。

 体裁はエッセイだが、何と浅田次郎自らの過去の悪行の数々の中から拾い出した文字通りの犯罪学入門。

 中でも圧巻なのは「取った」「取られた」の殺人現場に居合わせた体験談とその後日談。

 もうひとつは「天切り松」との出逢い。なんだよこれは小説中の架空の人物じゃなかったのかよとう思いのなかで、どこまでが虚構でどこまでが現実なのか、不明のままその内容に酔わせられる。

 ある意味では小説一冊のインパクトが十分に得られるほどの(平均よりは遥かに軽いんだけれども……)、異端エッセイ集だと言ってよかろう。

 ところで先日スポーツ紙の片隅に、幻冬社アウトロー文庫を賞賛するコラムが載っていた。現代のニーズに応えた人気文庫だとか、その内容の充実だとか、書店の影でひときわ異彩を放っているこの文庫への応援のコラムであった。実はぼくもこのアウトロー文庫応援している。中でも本書はアウトロー文庫に大変よくフィットした本だと思うし、このようにある方向をきちんと指し示す文庫というのは、誠に好感が持てると心密かに思ってきている。

(1998.06.17)