勝負の極意





題名:勝負の極意
作者:浅田次郎
発行:幻冬社アウトロー文庫 1997.4.25 初版 1997.12.15 4刷
価格:\457




 二部編成の原稿を一冊にまとめてオリジナル文庫化したもの。であるにも関わらず重版を重ねているところを見ると、浅田次郎という作家、もはや国民の人気アイドル的作家となってきた観在りや?

 第一部は講演から『私はこうして作家になった』。エッセイ集『勇気凛凛シリーズ』でも度々書かれているように、浅田次郎が作家になるためになにをしてきたかという講演ですね、つまり。

 第二部が圧巻なのだが、『私は競馬で飯を食ってきた』。読んでいるうちに半年も遠ざかって最近馬の名前もすっかりわからなくなってきていた俄か競馬好きの血が騒いできた。

 浅田次郎は作家でもそうでないアパレル関係の実業の部分でも成功しているのだが、競馬でも成功しているのだそうだ。ただしその成功の秘訣なんていうものはない。いろいろと合理的なことは書かれているのだが、どれをとっても合理的な努力、理詰めの根性、執念の反復……といったことがらに集約される。

 何事も一夜にしては成らざることを、覚悟の上で物事に挑む、作家以前の人間としての凄味のようなものを感じながら、どこかで「やっぱしマイナーだなあ。それに、ほんと、とことんアウトロー文庫してるよなあ」などと、ぼくの声はひたすら呟くのであった。

 なお興味深いのはこの本の編集者は『プリズンホテル』シリーズや『天切り松 闇がたり』『地下鉄に乗って』などの編集をした人間であるらしい。納得。

(1998.06.17)
最終更新:2007年06月04日 23:43