満天の星 勇気凛凛ルリの色





題名:満天の星 勇気凛凛ルリの色
作者:浅田次郎
発行:講談社 1999.1.25 初版
価格:\1,600

 浅田次郎の連載エッセイ集『勇気凛々』シリーズもこれで終わるのかと思うと少々寂しい。ついに四冊目のシリーズ最終巻にまで来てしまった。

 シンプルな題目を数ページで語りつつ、浅田次郎の複眼的な眼差しが、世相を縦横に斬り裂いてきたこのエッセイ集。何よりも浅田次郎の頑固さを感じさせられてきた。

 中年頑固ハゲの作者は、いろいろな決めごとを自分に課してゆくタイプの人であるらしく、とにかく決めごとでもって自らの行動規範とし、己れの行動や思考を律しているように見える。大体において人生の修羅場をいくつも潜り抜けた人というのは、その都度いろいろなものを学習してゆくので、ある意味頑固オヤジ化してゆくのもやむを得ないのだ。しかし、この作家に限れば、何せ小さい頃から作家になるためのさまざまな規律を自分に課してきたらしく、幼少の頃からの頑固さをどこか感じさせてくれる。

 だからこそ作者は成功の話を書きたかったという。人生の成功の話であり、夢をばらまく作家としての生き甲斐の話であり、作家だからこそ大きく高らかに表現できる文章という武器を持ってしての、語り部としての自己認識である。

 こうして明確なスタンスに立っているからこそ、世相を安定した同じ刃で斬り続けることができるのであろうし、その刃はいつも彼の規律によって砥ぎ続けられてきたに違いないのである。

 ともかく、ひとたびこの連載エッセイは終わってしまったのだそうである。語るべき
ことをだいぶ語った、という感もなくはないが。

(1999.04.20)
最終更新:2007年06月04日 22:52