屠られし者、その血によりて(改題:「紫苑」)


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作者:花村萬月
発行:徳間書店 1991.2.28 初版
価格:\1,400(本体1,359)

 花村萬月の作品はここまで大きく分けると、三種類ある。ひとつはハードボイルド『なで肩の狐』『眠り猫』。もう一つは青春はみ出し小説群『重金属青年団』ゴッドブレイス・シリーズ。そして残りが『聖殺人者イグナシオ』と本書であって、これは前記二者のどちらにも属さないといえるしどちらにも属すると言える。と言うと極めてわかりにくいかもしれないが、ともかくこの二作は互いに同じテーマの表裏であり、他の作品群とは少し色合いが異なるのである。

 第一にその異質さの特徴としては、極めて戯作的であり、リアリティが希薄なこと。それを最も裏付けているのが主人公の極めて非凡な特徴なのである。これらの主人公に較べれば、ほかの作品群は何と言ってもずっとリアルだ。この点だけでも、この二作に関しては「あまり好みはでない」と思われるリアリスム大好き読者が頻出するに違いないし、ぼく自信そのケはあるのだ(^^;)

 さて主人公は修道院出身の孤児で女性でIQ190の天才殺人者であるのだが、この殺人者というのが味噌。修道院の命を受けて殺しをその仕事としている様は、少し古いが漫画「ブラック・エンジェル」(現代版・仕掛人のようなもの)を想起させるし、言ってみれば、まあ劇画タッチのストーリーなのである。だから子供っぽいといえば子供っぽいので、その手の話がお嫌いな方には薦めにくい(^^;)

 もっとも、暗殺教団に関する参考文献なんかが巻末に挙げられているところを見ると、ただただ荒唐無稽なのかどうかはわからないのだが、この種のテーマを扱うならせめてラドラムくらいは目標に置いて欲しいとは思った(^^;)

 その修道院の背後には、いささか荒唐無稽とも言いたいような組織の影が見え隠れしたりしているし、ストーリーはさらにイタリア娯楽アクション映画の如く出血大サービス的場面の連続で、まあはっきり言うと、やり過ぎ。これがこってりと船戸与一のように長く長く描かれ、もっと錯綜したストーリーならよろしいのかもしれないけれど、どっこい軽すぎるし、本人があとがきで述べているように、プロットもいいかげんなところがありそう。ラストの流氷シーンが先に頭に浮かんでいて、そこへ持ってゆく小説をということで書き出したんだそうだが、まあそれなりに楽しいものの、急ぎ過ぎの感じは否めないのである。この人の作品ってみんな急ぎ過ぎなんだよね、どこか。

 さてこれを書き直したような作品が『聖殺人者イグナシオ』。ほとんど似たような話なのだが続いて書評書きましょう。

(1992/02/07)